マンション売却はオーナーチェンジの場合どうなる?売却の流れ・ポイント・注意点を解説
オーナーチェンジ
マンション売却
2023.05.30
本記事では、入居者がいる投資用マンションを売却したい方向けに、オーナーチェンジの概要と売却の流れ、評価基準、メリット・デメリットをお伝えします。その上で、オーナーチェンジ物件の売却で失敗しないためのさまざまなポイントについて解説していきます。
オーナーチェンジでのマンション売却とは
オーナーチェンジでのマンション売却とはどのようなものなのでしょうか。ここではその概要と流れについて解説します。
オーナーチェンジ物件の概要
オーナーチェンジとは、賃借人(部屋を借りている人)がいる物件を売却することです。物件のオーナー(所有者)が変わるので、オーナーチェンジと呼ばれています。前オーナーから物件を購入した新しいオーナーは、前オーナーと賃借人の間に結ばれていた賃貸借契約を引き継ぐことになります。
オーナーチェンジの売却価格の主な査定基準は、収益還元法です。一般的な住宅の売却の場合、取引事例比較法が用いられます。取引事例比較法とは、対象物件と似た条件の過去の不動産取引を参考に査定価格を算出する方法です。
しかしオーナーチェンジ物件は投資物件であり、売却する相手は不動産投資家です。投資の目的は、どの程度もうけられるかが評価基準となるため、収益還元法が用いられます。収益還元法は、その物件が将来にわたってどのくらいの収益を上げることができるのかを計算する評価方法で、直接還元法とDCF法という2通りの計算方法があります。個人の不動産投資の場面では簡易に計算できる直接還元法がよく用いられます。
直接還元法は、「一年間の収益/還元利回り」で求められます。還元利回りは、類似物件の平均的な利回りのようなものと考えてください。
オーナーチェンジ物件の売却の流れ
オーナーチェンジ物件の売却の流れは、基本的には居住用物件と変わりません。
(1)不動産会社に仲介を依頼する
仲介を依頼する不動産会社は、投資用マンションの売買を専門に取り扱っている不動産会社がよいでしょう。
(2)仲介会社を選んで媒介契約を結ぶ
査定結果をもとに仲介会社を選び、媒介契約を結びます。
(3)販売活動を行い、売買契約を結ぶ
仲介会社が物件の販売活動を行います。一般の居住用住宅の売却と異なり、賃貸人が生活している部屋には入れないため、内見対応はありません。購入希望者が出て、売買条件が合えば、売買契約を結びます。
(4)決済・引き渡し
売買契約後、売主・買主双方の都合を合わせて、決済と物件の引き渡しを行います。オーナーチェンジ物件には入居者がいるため、登記上の所有者が変更されるという意味での引き渡しとなります。新規のオーナーは、賃貸借契約を引き継ぎます。
オーナーチェンジでのマンションの売却のメリット・デメリット
ここからはオーナーチェンジのマンションを売却する上でのメリットとデメリットについて解説します。詳細は下記で詳しく解説しますが、オーナーチェンジではなく、空室の状態の方が売却しやすいといえます。
オーナーチェンジでのマンションの売却のメリット
・売却まで家賃収入が入る
マンションはいつ売却できるのかわかりません。空室の状態であれば、毎月の管理費・修繕積立金の支払いと年ごとの固定資産税の支払いで収支はマイナスです。オーナーチェンジ(賃貸中)の状態であれば、売却期間中も家賃収入を得ることができます。
・入居者の退去を待たずに売却ができる
オーナーチェンジでの売却なら、入居者が入った状態での売却であるため、入居者の退去を待つことや、売却のための退去を入居者にお願いする必要もありません。
オーナーチェンジでのマンションの売却のデメリット
・空室の状態より売却価格が安くなる
オーナーチェンジのマンションは空室の状態より売却価格が安くなります。空室であれば、居住用物件としても売却できますが、オーナーチェンジ物件は収益性を求められるためです。通常の居住用物件の場合、購入希望者は金利が安くて返済期間が長い住宅ローンを利用するため、販売価格が多少高くても売却することができます。
オーナーチェンジ物件の場合、購入者は投資家なので、収益性の高い物件、つまり販売価格が低く、家賃が高い物件でないと売れないため、空室の状態より売却価格が安くなる可能性があります。
・買手が投資家に限定される
オーナーチェンジ物件は買手が投資家に限定される点もデメリットです。なぜなら自己居住目的で家を探している人の数と不動産投資家の数では、投資家の人数の方が少ないためです。買手となる投資家の絶対数が少ないため、売却できるチャンスも少なくなります。
オーナーチェンジでのマンションの売却の注意点
ここからは、オーナーチェンジのマンションを売却する際の注意点について解説していきます。
オーナーチェンジ物件の売却が得意な不動産会社に仲介依頼する
オーナーチェンジ物件を売却する場合は、収益物件を専門に扱っている不動産会社を選んで仲介を依頼すべきです。不動産会社選びのための査定依頼は、オンラインの査定サービスがおすすめです。オンライン査定であれば、AI査定や匿名査定、一括査定などのさまざまな便利なサービスをオンライン上で利用できます。査定額の根拠がしっかりしていて、こちらの連絡質問に対して誠実な対応をする会社を選びましょう。
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売却価格の設定は利回りを高めに設定する
中古マンションの投資家向けの売却となるため、売却価格を下げることで利回りをある程度高く設定する必要があります。マンションのエリア、築年数、間取りなどにもよりますが、利回りの目安となる10%は確保するべきです。
購入希望者は投資家なので、収益性が高い(=利回りが高い)物件を求めます。利回りは下記の計算式で求められます。
表面利回り=年間家賃÷販売価格×100
※表面利回りは、税金や諸経費などを考慮しない利回りのこと
例えば家賃10万円利回り10%の場合、下記の式のように計算され、販売価格は1,200万円です。
利回り10%=(10万円×12ヵ月)/販売価格
販売価格=10%/120万円=1,200万円
同じ物件を2,400万円で売ろうとすると、利回りは5%となり、投資家向けの売却は難しくなります。
立ち退き交渉は必ずうまくいくとは限らない
オーナーチェンジではなく空室で売却するためには、現在の入居者と立ち退き交渉を行う必要があります。家主には入居者の意思に反して退去を強制する権利はありません。
立ち退き交渉の際は、退去料を支払うのが一般的です。退去料に決まりはありませんが、新居に移るための諸費用(引っ越し代、新居の敷金、新居の仲介手数料など)を支払うのが一般的です。退去料はケースバイケースですが、家賃の6カ月分が相場です。
交渉のタイミングとしては、賃貸契約更新時期の半年〜1年ほど前から、入居者に退去のお願いをするとよいでしょう。ただし、入居者の同意が得られない可能性もある点は留意しましょう。
不動産業者の買取も検討すべき
オーナーチェンジ物件の売却は、上述した通り、価格設定が難しく、かといって退去交渉も簡単に行えるものではないという問題があります。売却相手である投資家は、居住用物件の購入者よりも見る目が厳しく、収益性を高めるために低い金額の購入希望額を提示するケースも多いようです。
スムーズに早急に売却したい場合には、不動産会社による買取も検討してもよいでしょう。買取は市場価格よりも低い金額での売却になるデメリットがあります。しかし、買取であれば、売却先がすでに決まっているので、退去交渉など面倒な交渉事もなく、スピーディーに売却が可能です。また、不動産買取業者との直接買取であれば仲介手数料も不要であること、さらに残置物の撤去やリフォームする必要がないことも買取のメリットです。
まとめ
オーナーチェンジのマンションの売却には、空室よりも販売価格が低い、売却先が投資家に限られており売却のチャンスが少ないなどのデメリットも多くあります。可能であれば、退去交渉を行い空室の状態にして売却した方が売却価格も高くなります。面倒な手続きを避けて売却したいのであれば、買取もおすすめです。本記事がオーナーチェンジ物件の売却で悩まれている方々の助けになれば幸いです。
監修者:キムラミキ
ファイナンシャルプランナー(AFP)宅地建物取引士 社会福祉士 キャリアコンサルタント
日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。