築年数の古いマンションの売却に際して、マンション買取を選択肢に入れるとよいといわれることがあります。この記事では、古いマンションの売却を検討している方に向けて、なぜ古いマンションは買取がよいといわれるのか、古いマンションを買取に出すメリット・デメリット、マンション買取を成功させるためのポイントについてご説明します。
マンション買取の仕組み
マンション買取とは、不動産業者または買取業者にマンションを買い取ってもらうことを指します。しかし、マンション売却を検討する際、不動産仲介業者に売却を依頼する事を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。マンションの買取の仕組みや概要について、仲介と比較しながらご説明します。
買主
マンション買取において、買主となるのは不動産業者または買取業者です。仲介では、不動産仲介業者が買主を見つけてきてくれるため、不動産仲介業者に仲介の依頼をした段階では、買主が誰になるかは未定です。
売却のしやすさ
マンション買取の買主は不動産業者または買取業者と決まっているため、売却の手間も少なく、スケジュールも立てやすいといえます。また、チラシなどで販売活動が行われないため、売却がご近所などに知られにくいでしょう。
一方、仲介の場合は、まず不動産仲介業者との媒介契約を交わしても、買主が見つかるまでの期間は不確定です。特に古いマンションである場合には購入検討者が現れるまで時間を要する可能性もあるため、売却のスケジュールは立てにくくなります。また、販売活動を行うため内覧対応に時間を割く必要もあり、売却までに手間がかかります。
仲介手数料
仲介では、不動産仲介業者が見つけてきた不動産買取業者と契約成立した場合、不動産業者に仲介手数料を支払う必要があります。不動産業者または買取業者と直接売買契約であるため、仲介手数料の支払いは不要です。
参考【仲介手数料の速算表】
例えば、3,000万円で成約した場合、不動産の取引額は400万円超となりますので、
仲介手数料=3,000万円×3%+6万円=96万円が上限額となります。
価格
仲介では相場価格での売却ができる可能性が高いですが、売却ができるかどうかは不確定です。買取では相場価格を下回る可能性がありますが、売却は確定できます。
古いマンションの買取を検討するメリット
古いマンションの買取を検討するメリットには、次のようなものが挙げられます。古いマンションをできるだけ早く、諸費用や手間を省いて、売却したいという方にはメリットを感じやすいでしょう。
売却までの期間が短い
古いマンションへのニーズは低く、仲介で一般の買主に対して相場価格での売却ができる可能性はゼロではありませんが売却までには時間を要する可能性もあります。買取の場合、前段でも述べましたが、買主は不動産業者または買取業者と決まっているため、数日~数週間で売却ができます。売却までの期間が早いということは、それだけ現金化が早いということでもあります。売却収入をマンションの買い替えなどの必要資金に充てる場合には、売却までの期間が短いというのは大きなメリットです。
不動産買取業者との直接取引なら仲介手数料がかからない
不動産業者の直接買取は仲介手数料がかかりません。古いマンションは、経年劣化や将来の修繕費用などの懸念から、相場価格も購入時の価格より低くなる可能性が高いでしょう。買取でも仲介を挟む場合、その相場価格での売却収入から仲介手数料を支払う必要があります。
直接買取の場合、売却収入は相場価格を下回る可能性がありますが、仲介手数料を支払う必要はありません。売却にかかる諸費用を少しでも抑えたいという方には、メリットといえるでしょう。
不用品処分の費用も負担してくれる場合がある
仲介で一般の買主へ売却する場合、買主への引き渡しまでにハウスクリーニングを行ったり、不用品を処分したりする必要がありますが、その費用や手間は売主負担です。一方、買取の場合、不動産業者や買取業者によっては、ハウスクリーニングや不用品処分の費用も負担してくれる場合があります。引き渡しの手間や費用を少しでも抑えたいという方には、その費用や手間を不動産業者や買取業者が負担してくれるのはメリットといえるでしょう。
古いマンションの買取を検討するデメリット
古いマンションの買取には、以下のようなデメリットもあります。古いマンションの買取を成功させるためには、買取のデメリットも理解した上で、複数の不動産業者や買取業者にマンション買取の打診を行い、信頼できる業者かどうかを見極める姿勢が大切です。
売却価格が相場よりも安くなる可能性
不動産業者や買取業者は、マンション買取を行った後、リフォームなどを施して再販を行います。不動産業者や買取業者は、そのリフォーム費用や利益を確保する必要があるため、買取価格は相場価格よりも安く提示される可能性が高いでしょう。
仲介による一般の買主への売却の場合、確かに相場価格での売却ができる可能性があります。しかし、築年数が古いマンションへのニーズは低く、売却までに時間を要する可能性もゼロではありません。
売却収入を何かの必要資金に充てる予定がないなど、売却に時間がかかってもいいと考えている方にとっては、買取において売却価格が相場よりも安くなる可能性はデメリットになるかもしれません。
買い取ってもらえないマンションもある
古いマンションの売却を急ぎたい方にとって、買取は有効な選択肢です。しかし、必ずしも全てのマンションが買い取ってもらえるわけではないという点はデメリットになるでしょう。
先ほども述べたように、不動産業者や買取業者は、マンション買取を行った後、リフォームなどを施して再販を行います。そのため「古すぎる」「耐震基準を満たしていない」などの理由で、再販できる可能性が低いと判断された場合には、買い取ってもらえない場合もあります。
ただし、自己判断や一つの不動産業者や買取業者から断られたからといって、古いマンションは買取をしてもらえないと結論を出すのは早計です。複数の不動産業者や買取業者に査定依頼、買取の打診を行い、買い取ってもらえる業者を探してみましょう。
まとめ
古いマンションはニーズが低いため、市場での成約に至りにくい可能性があります。とはいえ、最初から仲介での市場売却を諦める必要もありません。
仲介をしてもらうための媒介契約のうち専任媒介、専属専任媒介は契約期間が3カ月です。この3カ月を目安と考えておき、その期間に売却が進捗しない場合に備えて、マンション買取も視野に入れて売却活動を進めていくとよいでしょう。
仲介による売却、買取による売却のいずれも、まずはマンションの資産価値を把握しなければ、売却を前に進めることはできません。複数の不動産業者や買取業者に価格査定を依頼し、査定価格について納得のいく説明をしてくれる信頼できる業者を見極めていくところから、マンション売却の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
監修者:キムラミキ
ファイナンシャルプランナー(AFP)宅地建物取引士 社会福祉士 キャリアコンサルタント
日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。